高齢者が街にあふれる社会 日本の現実
高齢化先進国~日本~
2017年10月1日現在、日本の65歳以上の高齢者は3,515万人、高齢化率は27.7%と、世界一の高齢化先進国となっている。15歳未満の人口は1,559万人、率にして12.3%と高齢者の半分にも満たない少子高齢化社会である。
人口減少が加速していく中で、高齢化率は上昇を続け、2036年には33.3%、2065年には38.4%となり、国民の約2.6人に一人が65歳以上となる。同じ2065年には75歳以上の高齢化率は25.5%と3.9人に1人が75歳以上となる超高齢化社会が到来する。
国立社会保障・人口問題研究所の中位推計では、日本の総人口は長期の人口減少過程に入っており、2053年には1億人を割って9,924万人になり、さらに2065年には8,808万人に減少すると推計されている。
人類の歴史的を振り返っても、これだけの短期間に物凄いスピードとボリュームで高齢化と人口減少が進んだ例はない。
内閣府資料
20~50年後の日本は、高齢者が街にあふれる国になっている。その時、日本の社会経済、人々の暮らしはどのような姿になっているのだろうか?
中国や韓国でも日本のあとを追うように高齢化が進行している。日本は高齢化の先進国として様々な課題に立ち向い解決すべき問題を抱えている。社会保障や医療、さらに生きがいといった問題に関して私たちは真剣に考えていかなければならない瀬戸際に立たされている。
内閣府資料
過疎地域、限界集落の増加~地域社会の危機的状況
平日の昼間の住宅街やスーパーを歩くと、買い物をしたり、運動をしたりする高齢者の姿が目につき、子供連れの若い主婦の姿を見ることが少なくなってきている。昔賑やかだった団地の周辺に軒を連ねていた個人商店のシャッターが閉まっていたり、商品の数が減っていたりする姿も珍しくない。
過疎地域は人口減少率・高齢者率・若年者率などをもとに決まっている。過疎地域が占める面積は日本国土の57.3%、人口は1,120万人と日本の人口の8.8%を占めている。
2017年4月時点で、北海道には149の過疎市町村があり、青森県29市町村……首都圏でも東京都に2町4村、千葉県に2市4町、埼玉県に1町1村、神奈川県にも1町ある。
また、人口の50%以上を65歳以上の高齢者が占める地域を「限界集落」と呼んでいるが、東京23区内にも限界集落はある。東京23区で最も高齢化率が高いのが、大田区東糀谷6丁目(60.6%)、次に北区桐ヶ丘1丁目(58.5%)、世田谷区大蔵3丁目(55.1%)、北区桐ヶ丘2丁目(54.4%)、北区王子本町3丁目(53.1%)と続く。東京都23区全体の高齢化率は22%だが、団地や共同住宅が密集しているような地域に「限界集落」が発生し、その数は増え続けている。
将来、日本の至るところで過疎地域や限界集落が生まれ、多くの自治体や地域コミュニティーが消滅していく可能性がある。
縮む地域社会という意味では、限界集落に限らず、首都圏でもこれから高齢化が進み、人口減少と相まって、不動産価格の下落や住民サービスの低下が懸念されている。
2013年10月時点の空き家数は820万戸、空き家率は13.5%に上っている。野村総研のリポートでは、中古住宅流通市場の整備が進まない場合、2033年には全国の空き家が約2,150万戸、空き家率は30.2%まで拡大すると予測されている。空き家が増加することによって、地域サービスの低下や防犯上の懸念が増えてくる。
地域福祉を支える民生委員の高齢化が進み、60歳代以上が85%を占め、地域の身近な相談先として困りごとや悩みに答える担い手が不足してきている。
さらに、スーパー、病院、銀行などが縮小・統合されていくことで利便性が損なわれ、過疎化が一層進むことなどの懸念は尽きない。
未来を俯瞰した課題解決力
人口減少が進む日本社会の未来には厳しいものがある。早急に未来に向けた種まきを行う必要である。見過ごすことなく現在の日本が抱える危機的状況の緩和に向けた方策を講じていく必要がある。
そのためには、子育て世代への支援の強化をもちろんのこと、地域社会での相互互助システムの創出(助け合い促進のためのポイント・地域通貨の活用)、IT・AIの活用による利便性の向上、医療技術の向上とコストの削減、中古不動産の活用による中心市街地への誘導(コンパクトシティ)、外国人材の受け入れと共生など様々なアイデアを具体化していく必要がある。
さらに、国の財政が将来世代に大きな負担を強いることが懸念される今、財政支出を抑え、プライマリーバランスの黒字化を早期に実現する必要がある。
高齢者が街にあふれる時代の到来を成すがままにするのではなく、未来を俯瞰した対策を講じていくべきなのである。
IT、AI、グローバル化の積極的な推進
IT、AIの進歩には目を見張るものがある。高齢者にとって車の運転が自動化されれば日常生活の行動範囲が広がる。車や宿泊などのシェアエコノミーが普及すれば低コストで余暇を楽しむことができる。キャッシュレス決済が進めばコンビニなどの自動化・省力化の助けとなる。技術のめまぐるしい進歩に伴って情報弱者ともなり得る高齢者をフォローする手立てを講じることも必要になってくるだろう。
また、グローバル化の進展は社会全体を大きく変えるだろう。今までは、日本の製造業が世界展開するなかで、安価な労働力を求め、“外”に向かったグローバル化の面が強かったが、これからは日本の“内”なるグローバル化が進んでいく。政府も外国人労働者の確保に向け政策を大きく転換した今、労働力の確保の観点から、日本においても外国人労働者の受け入れが一層進むだろう。
外国人との共生を考える場合、確かに多くの問題点もある。しかし、マイナス面だけを強調するのではなく、多くのプラス面があることに眼を向ける必要がある。
現在、東京都新宿区の外国人住民の比率は12.1%、東京都豊島区は10.0%、東京都荒川区は8.5%、東京都港区は7.8%、東京都台東区は7.4%となっている。すでに日本でも外国人との共生が進んでいるのである。
世界の歴史を見ても移民や民族の移動というものはいつの時代にもあり、長い眼でみると、異なる文化や思想を受け入れることで、その国の文化は豊かになっていった。
IT・AI化、グローバル化はこれからも進む。これらを積極的に受け入れるなかでこそ、新しい技術や思想が育まれるという視点に立ち、これからの日本の未来を考え、新しい時代の社会システムを構築していく必要がある。